あれは忘れもしない、ある週の半ばのことでした。朝起きると、なんだか右側の喉の奥に軽い違和感がありました。風邪でもひいたかな、くらいに思っていたのですが、時間が経つにつれてその違和感は明らかな痛みに変わり、さらに同じ右側の奥歯までズキズキと痛み始めたのです。最初は、歯が痛いから喉も痛むように感じるのか、それとも喉が痛いから歯に響いているのか、自分でもよく分かりませんでした。ただ、片側だけ、というのが妙に気になりました。食事をしようとしても、右側で噛むと歯と歯茎に激痛が走り、飲み込もうとすると喉が締め付けられるように痛むのです。唾を飲み込むだけでも一苦労で、これは尋常ではないと感じました。市販の痛み止めを飲んでみましたが、気休め程度にしかならず、痛みはどんどん強くなるばかり。そのうち、右側の顎の下あたりも腫れてきているような気がしました。熱っぽさもあり、体全体がだるく感じられました。週末まで我慢しようかとも思いましたが、このままでは仕事にも集中できないし、何より食事がまともに摂れないのが辛すぎました。意を決して、翌日、近所の歯科医院に電話をしました。症状を伝えると、すぐに来てくださいとのこと。診察の結果、原因は右下の親知らずでした。レントゲンを見ると、私の親知らずは横向きに生えていて、その一部が歯茎から少しだけ顔を出している状態でした。そこの隙間に汚れが溜まって細菌感染を起こし、「智歯周囲炎」という状態になっていたのです。そして、その炎症がかなり進行し、周囲の組織やリンパ節にまで影響を及ぼし、喉の痛みや顎の腫れを引き起こしていたとのことでした。先生からは、まずは抗生物質と消炎鎮痛剤で炎症を抑え、炎症が落ち着いたら抜歯を検討しましょう、という説明を受けました。薬を飲み始めて二日ほど経つと、あれほど酷かった喉と歯の痛み、そして顎の腫れが嘘のように引いていきました。あんなに辛かったのは何だったんだ、と思うほどでした。その後、炎症が完全に治まってから、無事に親知らずを抜歯してもらいました。