歯科治療の不安を和らげる笑気麻酔は、多くの人にとって有効な手段ですが、残念ながら全ての人に合うわけではありません。中には、「笑気麻酔が合わなかった」「かえって気分が悪くなった」という経験をされる方もいらっしゃいます。このような「合わない」という状況は、笑気麻酔の持つデメリットや、個人の体質が関係していると考えられます。まず、笑気麻酔の効果の現れ方には大きな個人差があります。同じ濃度のガスを吸入しても、非常にリラックスできる人もいれば、ほとんど効果を感じない人、あるいは逆に不快感を覚える人もいます。これは、その人の感受性や代謝能力、その日の体調、精神状態などが複雑に影響するためです。特に、極度の不安や恐怖心を持っている場合、笑気によるリラックス効果よりも不安感が上回ってしまい、効果を実感しにくいことがあります。また、副作用の出やすさも体質と関連が深いです。代表的な副作用である吐き気や嘔吐は、乗り物酔いをしやすい体質の人に起こりやすい傾向があると言われています。三半規管が敏感であったり、自律神経が乱れやすかったりする人は、笑気ガスの影響を受けやすいのかもしれません。同様に、頭痛やめまいなども、血管の反応性や血圧の変動しやすさといった体質的な要素が関与している可能性があります。鼻呼吸がうまくできないというのも、「合わない」と感じる一因になります。笑気ガスは鼻から吸入するため、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などで常に鼻が詰まっている人、あるいは無意識に口呼吸をしてしまう癖がある人は、十分な量のガスを吸入できず、効果が得られません。このような場合、いくら濃度を上げても効果は期待できず、むしろマスク装着の不快感だけが増してしまうこともあります。さらに、精神的な側面も無視できません。閉所恐怖症の傾向がある人は、鼻にマスクを装着されること自体に強い圧迫感や息苦しさを感じ、パニックに近い状態になってしまうことがあります。また、過去に麻酔で不快な経験をしたことがある人は、その記憶がよみがえり、笑気麻酔に対してもネガティブな感情を抱きやすく、リラックスできないことがあります。特定の持病も「合わない」原因となり得ます。例えば、重度の喘息やCOPDなどの呼吸器疾患を持つ人は、ガスの吸入が呼吸状態を悪化させるリスクがあるため、基本的に使用できません。
笑気麻酔が合わない人もいる?デメリットと体質の問題