片側の喉と歯に同時に痛みが現れたとき、「そのうち治るだろう」と安易に考えて放置してしまうのは非常に危険です。なぜなら、その痛みの背後には、単なる一時的な不調ではなく、治療が必要な様々な病気が隠れている可能性があるからです。そして、それらの病気を放置することで、症状が悪化したり、より深刻な合併症を引き起こしたりするリスクがあるのです。例えば、痛みの原因が親知らずの炎症(智歯周囲炎)であった場合、放置すると炎症が周囲の組織へとどんどん広がっていきます。顎の骨にまで炎症が及ぶと「顎骨炎(がくこつえん)」という状態になり、強い痛みや腫れ、さらには皮膚から膿が出ることもあります。重症化すると、口がほとんど開かなくなる「開口障害」や、炎症が喉の奥深くにまで広がり呼吸困難を引き起こす「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」といった、命に関わる危険な状態に至る可能性もゼロではありません。また、虫歯や歯周病が原因で歯の根の先に膿が溜まり、それが片側の歯と喉の痛みを引き起こしている場合、放置すると膿の袋がどんどん大きくなり、周囲の骨を溶かしてしまいます。時には、皮膚や口の中に穴が開いて膿が出てくる「瘻孔(ろうこう)」を形成することもあります。さらに、この細菌感染が血液中に入り込み、全身に影響を及ぼす「菌血症」や、稀ではありますが心臓の病気(感染性心内膜炎)などを引き起こすリスクも考えられます。もし、片側の歯と喉の痛みの原因が「歯性上顎洞炎」であった場合、これを放置すると慢性的な副鼻腔炎へと移行し、常に鼻詰まりや色のついた鼻水、頭痛などに悩まされることになります。炎症が眼や脳にまで波及すると、視力障害や髄膜炎といった重篤な合併症を引き起こす可能性も否定できません。扁桃炎や咽頭炎といった喉の感染症が原因である場合も、放置は禁物です。炎症が進行すると、扁桃周囲炎や扁桃周囲膿瘍となり、激しい痛みや呼吸困難、食事摂取困難などをきたします。さらに、溶連菌感染症が原因の扁桃炎の場合、治療が遅れるとリウマチ熱や急性糸球体腎炎といった合併症を引き起こすことがあります。