長年、原因不明の頭痛に悩まされてきた40代の男性がいました。特に起床時と午後に痛みがひどく、市販の頭痛薬が手放せない状態でした。様々な病院を受診しましたが、特に異常は見つからず、ストレスや体質の問題と言われていました。しかし、ある時、虫歯を治療するために歯科医院を訪れた際、ついでに頭痛についても相談してみました。詳しく話を聞いた歯科医師は、男性の噛み合わせにわずかな問題があること、そして無意識のうちに歯ぎしりや食いしばりをしている可能性があることを指摘しました。自覚症状はほとんどありませんでしたが、奥歯の一部が不自然にすり減っているのが確認されました。歯科医師は、この噛み合わせのずれや歯ぎしりによる顎周辺の筋肉の緊張が、頭痛の一因となっている可能性が高いと説明しました。男性は半信半疑でしたが、マウスピースを使った治療と、噛み合わせの微調整を受けることになりました。治療を開始してから数週間後、男性は驚くべき変化を実感しました。あれほど毎日のように悩まされていた頭痛の頻度が減り、痛みの度合いも軽くなったのです。特に起床時の頭痛はほとんど起きなくなりました。治療を続けるうちに、頭痛薬を飲む回数は激減し、最終的にはほとんど必要なくなりました。この症例のように、一見頭痛とは無関係に思える歯や顎の問題が、実は頭痛の根本的な原因となっていることがあります。特に、他の原因が見つからない慢性的な頭痛に悩んでいる方は、噛み合わせや歯ぎしり、顎関節の状態など、口腔内の問題を一度専門医に相談してみる価値は大きいと言えるでしょう。適切な歯科治療によって、長年の頭痛から解放される可能性があるのです。