口内炎にできる白い膜、いわゆる偽膜は、見た目にも気になり、ついつい舌で触ったり、指で剥がしたくなったりするかもしれません。「これを取り除けば早く治るのでは?」と考える人もいるかもしれませんが、実はそれは逆効果になる可能性が高いのです。一般的なアフタ性口内炎の場合、この白い偽膜は、炎症によって傷ついた粘膜の表面を覆い、外部の刺激から保護する役割を持っています。いわば、自然にできた「かさぶた」のようなものです。この偽膜の下では、新しい粘膜細胞が再生され、傷の修復が活発に行われています。もし、この白い偽膜を無理やり剥がしてしまうと、どうなるでしょうか。まず、保護されていたデリケートな再生中の組織が露出し、外部からの刺激(食べ物、飲み物、歯ブラシなど)を直接受けることになります。これにより、痛みが悪化したり、治癒に必要な細胞が傷ついたりして、かえって治りが遅くなってしまう可能性があります。また、傷口から細菌が侵入しやすくなり、二次感染を引き起こすリスクも高まります。そうなると、炎症がさらに悪化し、症状が長引くことにもなりかねません。ですから、口内炎の白い偽膜は、基本的に触らず、自然に剥がれ落ちるのを待つのが正解です。治癒が進むにつれて、この白い膜は徐々に小さく薄くなり、最終的には新しい粘膜に置き換わって自然に消失します。ただし、すべての白いものが「触ってはいけない偽膜」とは限りません。例えば、口腔カンジダ症の場合、白い苔のようなものが付着し、これはガーゼなどで比較的容易に剥がせることがあります。しかし、これも自己判断で無理に行うべきではありません。また、白板症という前がん病変は、白い膜状のものが粘膜に固着し、擦っても取れないのが特徴です。このように、口腔内にできる白い病変には様々な種類があり、それぞれ対処法が異なります。