口内炎ができる場所は様々ですが、その場所によって、ある程度原因を推測したり、体の状態を把握したりする手がかりになることがあります。もちろん、一概には言えませんが、知っておくとセルフケアや受診の目安になるかもしれません。例えば、舌の先端や側面に繰り返しできる口内炎は、歯の鋭縁や合わない詰め物、あるいは無意識の舌の噛み癖などが原因である可能性があります。この場合、歯科で歯の研磨や詰め物の調整、あるいは噛み癖を改善するためのマウスピース作成などを検討する必要があるかもしれません。また、舌は体の状態を反映しやすい部位とも言われ、特定の栄養素の不足(特に鉄分やビタミンB群)や消化器系の不調が、舌炎や口内炎として現れることもあります。唇の裏側や口角にできる口内炎は、物理的な刺激(誤って噛む、熱いものによる火傷など)に加え、胃腸の調子が悪い時や、ビタミンB群、特にビタミンB2(リボフラビン)が不足しているサインであるとも言われます。口角炎は、カンジダ菌というカビの一種が原因となることもあり、この場合は抗真菌薬による治療が必要です。歯茎にできる口内炎は、歯ブラシによる傷や、歯周病の初期症状、あるいはヘルペスウイルスのような感染症が原因となることがあります。特に、歯茎全体が赤く腫れて複数の口内炎が見られる場合は、ヘルペス性歯肉口内炎の可能性も考えられるため、早めの受診が推奨されます。頬の内側によくできる口内炎は、やはり噛み合わせの問題や、ストレスによる食いしばり、頬杖をつく癖などが関係しているかもしれません。また、喫煙者に多い白板症という前がん病変との区別も重要になることがあります。喉の奥や扁桃腺の近くにできる口内炎は、風邪などのウイルス感染や細菌感染が原因であることが多いです。高熱を伴ったり、飲み込むのが困難な場合は、耳鼻咽喉科での診察が必要です。また、稀ではありますが、特定の場所に繰り返しできる、あるいはなかなか治らない大きな口内炎は、ベーチェット病のような全身性の疾患や、口腔がんの初期症状である可能性も否定できません。特に2週間以上治らない口内炎や、しこりや出血を伴う場合は、必ず専門医の診察を受けてください。このように、口内炎ができる場所は、その原因や背景にある体の状態を示唆してくれることがあります。