口内炎の白い膜その正体と役割

口内炎ができると、患部の中心に白っぽい膜のようなものが現れることがあります。この白い膜は一体何なのでしょうか。そして、何か役割があるのでしょうか。多くの人が経験する一般的な口内炎、いわゆるアフタ性口内炎の場合、この白い部分は「偽膜(ぎまく)」と呼ばれています。偽膜は、炎症によって破壊された口腔粘膜の細胞や、白血球、フィブリンという血液凝固に関わるタンパク質などが集まってできたものです。つまり、傷口を保護し、治癒を促すための一種の「かさぶた」のような役割を果たしていると考えることができます。この偽膜の下では、新しい粘膜細胞が再生されようと活発に活動しています。そのため、無理にこの白い膜を剥がそうとすると、再生中のデリケートな組織を傷つけてしまい、治癒を遅らせたり、さらに炎症を悪化させたりする可能性があります。痛みが増すこともありますので、自然に剥がれ落ちるのを待つのが賢明です。白い膜の周囲が赤く腫れているのは、炎症反応が起きている証拠です。毛細血管が拡張し、免疫細胞が集まってきている状態を示しています。この白い膜の大きさや厚みは、口内炎の進行度合いや重症度によって変化します。初期には小さく薄いものですが、炎症が進行するとよりはっきりとした白い膜として認識されるようになります。そして、治癒が進むにつれて、この白い膜は徐々に小さくなり、色が薄くなっていき、最終的には消失して新しい粘膜に置き換わります。しかし、口内炎の白い部分が全てこの偽膜であるとは限りません。例えば、口腔カンジダ症というカビの一種が原因で起こる口内炎では、白い苔のようなものが粘膜に付着し、これを擦ると剥がれ落ち、下から赤い粘膜面が現れることがあります。これは偽膜とは異なるものです。また、白板症(はくばんしょう)という、まれにがん化することのある前がん病変も、口腔粘膜に白い病変として現れます。これは擦っても剥がれないのが特徴で、口内炎とは区別が必要です。したがって、口内炎にできた白い膜がなかなか治らない、徐々に大きくなる、あるいは白い部分の性状がいつもと違うと感じる場合は、自己判断せずに歯科医師や口腔外科医に相談することが重要です。