初期虫歯は削らない?最新の歯科治療と予防法

近年の歯科医療では、特に「初期虫歯」に対しては、必ずしもすぐに削るという選択がなされるわけではありません。むしろ、「できるだけ削らずに、自分の歯を長持ちさせる」という考え方、いわゆるMI(ミニマルインターベンション:最小限の侵襲)が主流になりつつあります。では、なぜ初期虫歯は削らないことがあるのでしょうか。そして、そのような場合の最新の治療法や予防法にはどのようなものがあるのでしょうか。初期虫歯とは、歯の表面のエナメル質が溶け始めたごく初期の段階で、まだ穴が開いていない状態(CO:初期う蝕)を指します。この段階の虫歯は、実は「再石灰化」という歯の自然治癒力によって修復される可能性があります。唾液に含まれるカルシウムやリンといったミネラル成分が、溶け出したエナメル質に再び沈着し、歯を硬くするのです。この再石灰化を促すためには、いくつかの重要なポイントがあります。まず、適切なプラークコントロールです。虫歯の原因となる細菌の塊であるプラークを、毎日の丁寧な歯磨きやデンタルフロス、歯間ブラシの使用によって徹底的に除去することが基本です。プラークが残っていると、細菌が酸を作り続け、再石灰化が妨げられてしまいます。次に、フッ素の活用です。フッ素には、歯の再石灰化を促進する効果、歯質を強化して酸に溶けにくくする効果、そして虫歯菌の活動を抑制する効果があります。フッ素入りの歯磨き粉の使用はもちろんのこと、歯科医院で定期的に高濃度のフッ素を塗布してもらうことも非常に効果的です。特に、初期虫歯が見つかった部位には、集中的にフッ素を作用させることが重要になります。さらに、食生活の改善も欠かせません。甘いものや炭水化物の摂取回数が多いと、口腔内が酸性に傾いている時間が長くなり、脱灰が進みやすくなります。だらだら食べを避け、規則正しい食生活を心がけることが、再石灰化を促す上で大切です。歯科医院では、このような初期虫歯に対して、単に「経過観察」とするだけでなく、より積極的に再石灰化を促すためのアプローチが行われることがあります。