口内炎ができたとき、患部に白い膿のようなものが付着しているように見えることがあります。「これは膿なのだろうか?」「潰した方がいいのだろうか?」と不安に思うかもしれません。しかし、一般的な口内炎、特にアフタ性口内炎の場合、この白い部分は厳密には「膿」ではありません。多くの場合、これは「偽膜(ぎまく)」と呼ばれるものです。偽膜は、炎症によって壊死した口腔粘膜の細胞、免疫細胞である白血球、そして血液を固める働きのあるフィブリンというタンパク質などが集まって形成された、薄い膜状の物質です。つまり、傷口を保護し、治癒を助けるための一種の「自然な絆創膏」のような役割を果たしています。膿は、細菌感染が起こった際に、細菌と戦った白血球の死骸や、破壊された組織の液などが混じり合ってできる黄白色の液体です。確かに偽膜にも白血球が含まれていますが、膿のように流動性があるわけではなく、患部に比較的しっかりと付着しています。では、なぜ膿のように見えるのでしょうか。それは、偽膜の色調が白っぽく、少し盛り上がって見えることがあるため、視覚的に膿を連想させるからかもしれません。また、口内炎が細菌の二次感染を起こし、本当に膿が溜まってしまうケースも稀にはありますが、その場合はより強い痛みや腫れ、発熱などを伴うことが多いです。もし、口内炎の白い部分が明らかに液体状で、周囲の腫れや痛みが非常に強い、あるいは悪臭があるといった場合は、細菌感染による化膿の可能性も考えられるため、速やかに歯科医師や口腔外科医の診察を受ける必要があります。自己判断で潰したりすると、感染を広げてしまう危険性があります。通常の偽膜であれば、治癒が進むにつれて自然に小さくなり、剥がれ落ちていきます。無理に剥がしたり、潰したりすることは、治癒を遅らせ、症状を悪化させる原因となるため避けるべきです。