頬の奥の痛み、色のついた鼻水、鼻詰まり、頭痛…これらの症状に悩まされている場合、それは「上顎洞炎(じょうがくどうえん)」かもしれません。上顎洞炎は副鼻腔炎の一種で、鼻の奥にある上顎洞という空洞に炎症が起きる病気です。風邪をひいた後などに発症することが多く、比較的よく見られる疾患ですが、「自然に治るのだろうか?」と疑問に思う方もいるでしょう。結論から言うと、軽度の上顎洞炎であれば、体の免疫力によって自然に治癒することもあります。しかし、症状の程度や原因、個人の体質によっては、適切な治療が必要となるケースも少なくありません。まず、上顎洞炎の主な原因は、風邪やインフルエンザなどのウイルス感染、あるいは細菌感染です。これらの感染によって鼻の粘膜が腫れ、上顎洞と鼻腔をつなぐ自然口(交通路)が塞がれてしまうと、上顎洞内に膿や分泌物が溜まり、炎症が悪化します。また、アレルギー性鼻炎が長引くことや、虫歯や歯周病といった歯のトラブルが原因で上顎洞に炎症が及ぶ「歯性上顎洞炎」も存在します。症状としては、冒頭に挙げたものの他に、顔面(特に頬や目の下)の圧迫感や痛み、嗅覚の低下、後鼻漏(鼻水が喉に流れる感覚)、咳、微熱などが現れることがあります。特に、片側だけに症状が強く出る場合は、歯性上顎洞炎の可能性も考慮されます。では、どのような場合に自然治癒が期待でき、どのような場合に治療が必要となるのでしょうか。一般的に、風邪をひいた後の一時的な軽い症状で、鼻水がサラサラとした透明なものであれば、数日から1週間程度で自然に軽快することがあります。この場合、十分な休息と栄養を摂り、体を温め、鼻を優しくかむなどのセルフケアが有効です。しかし、症状が1週間以上続く、色のついたネバネバした鼻水が出る、頬の痛みが強い、発熱があるといった場合は、細菌感染を伴っている可能性が高く、自然治癒が難しくなってきます。このような急性上顎洞炎では、抗生物質の内服や、鼻の処置(鼻水の吸引やネブライザー療法など)が必要となることが多いです。また、これらの症状が3ヶ月以上続く場合は「慢性上顎洞炎」と診断され、より専門的な治療が必要になることがあります。慢性化すると、鼻の中にポリープ(鼻茸)ができたり、粘膜が厚くなったりして、薬物療法だけでは改善が難しく、場合によっては内視鏡下副鼻腔手術が検討されることもあります。