歯科検診で、以前別の歯科医院では小さな虫歯でもすぐに治療していた経験がある方や、痛みがなくても「虫歯は早く治した方が良い」という一般的なイメージを持っている方にとっては、戸惑うかもしれません。歯科医師によって治療方針が異なることは、実は珍しいことではありません。なぜなら、虫歯の診断や治療開始のタイミングには、ある程度の幅があり、歯科医師の経験や治療哲学、そして患者さんの口腔内の状況やリスク評価によって判断が分かれることがあるからです。例えば、ごく初期の虫歯(CO:初期う蝕)で、エナメル質の表面がわずかに白濁している程度のものは、フッ素塗布や適切なセルフケアによって再石灰化(自然治癒)する可能性があります。このような場合、積極的に削らずに経過を見るという方針は、歯をできるだけ温存するという「MI(ミニマルインターベンション)」の観点からは非常に理にかなっています。しかし、患者さんのブラッシングの状態が悪かったり、甘いものを頻繁に摂取する習慣があったりするなど、虫歯のリスクが高いと判断されれば、たとえ小さな虫歯でも早期に治療介入した方が良いと考える歯科医師もいます。また、虫歯の部位や見えにくさ、レントゲンでの影の濃さなども判断材料となります。もし、かかりつけの歯科医師から「小さい虫歯なので経過観察」と言われ、その説明に納得がいかない、あるいはどうしても不安が拭えないという場合は、セカンドオピニオンを求めることを検討してみても良いでしょう。セカンドオピニオンとは、現在診療を受けている主治医以外の医師に、診断や治療方針について意見を求めることです。別の歯科医師の意見を聞くことで、現在の治療方針の妥当性を再確認できたり、あるいは異なる視点からのアドバイスを得られたりする可能性があります。セカンドオピニオンを求める際には、これまでの経緯や検査結果(レントゲン写真など)を持参すると、よりスムーズに意見を聞くことができます。