口内炎と聞くと、舌や唇の裏、頬の内側などを思い浮かべる方が多いかもしれません。確かにこれらは口内炎ができやすい代表的な場所ですが、実はもっと意外な場所にも口内炎は発生することがあります。そうした場所にできる口内炎は、原因が特定しにくかったり、発見が遅れたりすることもあるため、注意が必要です。例えば、歯茎と唇の間の溝、いわゆる「口唇溝」や「頬粘膜移行部」と呼ばれる部分です。このあたりは、歯ブラシが届きにくく清掃が不十分になりがちな上に、入れ歯のバネが当たったり、食べ物が挟まったりすることで刺激を受けやすい場所です。また、舌の付け根に近い部分や、喉に近い軟口蓋(なんこうがい)と呼ばれる口の天井の柔らかい部分にも口内炎ができることがあります。これらの場所は、鏡を使っても自分では見えにくいため、飲み込むときの違和感や、何となくヒリヒリする感じではじめて気づくことも少なくありません。さらに、上顎の硬い部分である「硬口蓋(こうこうがい)」にも、稀に口内炎ができることがあります。これは、熱い食べ物による火傷や、硬い食べ物による物理的な刺激が原因となることが多いようです。特に、ピザのチーズや揚げ物など、高温で表面が硬いものを食べた後に発生しやすいと言われています。唾液腺の開口部周辺にできることもあります。唾液の出口が何らかの原因で詰まったり、炎症を起こしたりすることで、その周囲に口内炎のような症状が現れるのです。これは、唾石症や唾液腺炎といった他の疾患との鑑別が必要になる場合もあります。これらの意外な場所に口内炎ができる原因も、基本的には他の場所と同様、物理的な刺激、免疫力の低下、栄養不足、ウイルスや細菌の感染などが考えられます。しかし、場所によっては特定の原因が強く関与していることもあります。例えば、入れ歯が当たる場所に繰り返しできる場合は、入れ歯の調整が必要ですし、特定の食べ物を食べた後にいつも同じ場所にできるなら、アレルギーの可能性も考慮すべきかもしれません。もし、普段あまりできないような場所に口内炎ができたり、なかなか治らなかったり、あるいは強い痛みを伴う場合は、自己判断せずに歯科医師や耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。
口内炎はこんな意外な場所にもできる