口内炎と一口に言っても、その見た目にはいくつかのバリエーションがあります。よく見られるのは、中心部が白く、その周りが赤く縁取られているタイプですが、全体的に赤く見える口内炎も存在します。これらは何が違うのでしょうか。まず、中心部が白く見える口内炎の代表は「アフタ性口内炎」です。この白い部分は「偽膜(ぎまく)」と呼ばれ、炎症によって破壊された粘膜細胞や白血球、フィブリン(血液凝固に関わるタンパク質)などが集まってできたものです。傷口を保護し、治癒を助ける「かさぶた」のような役割をしています。この偽膜の周囲が赤く見えるのは、炎症反応によって毛細血管が拡張し、充血しているためです。つまり、白い部分は炎症の中心であり、その周囲の赤い部分は炎症が及んでいる範囲を示していると言えます。痛みが強く、食事や会話に支障をきたすことが多いのが特徴です。一方、全体的に赤く見える口内炎としては、「カタル性口内炎」が挙げられます。これは、主に物理的な刺激(合わない入れ歯や矯正器具、誤って噛んだ傷、熱いものによる火傷など)や、口腔内の衛生状態の悪化によって引き起こされることが多いです。アフタ性口内炎のような明確な白い偽膜は形成されず、粘膜が赤く腫れたり、ただれたり、水疱ができたりします。境界が不明瞭で、広範囲にわたって炎症が広がることもあります。痛みは比較的軽度な場合もありますが、ヒリヒリとした灼熱感を伴うこともあります。また、ウイルス感染によって起こる口内炎も、見た目が異なることがあります。例えば、「ヘルペス性口内炎」では、初期に小さな水疱が多発し、それが破れてびらんや浅い潰瘍を形成します。個々の潰瘍は白っぽく見えることもありますが、広範囲に赤くただれたように見えることもあります。特に初感染の場合は、歯茎全体が赤く腫れ上がる「ヘルペス性歯肉口内炎」として現れることもあります。このように、口内炎の見た目の違いは、その原因や炎症のメカニズム、進行度合いによって生じます。白い偽膜があるかどうか、周囲の赤みの範囲や強さ、水疱の有無などを観察することで、ある程度口内炎の種類を推測することができます。
白い口内炎と赤い口内炎の違いとは