ようやく口内炎の痛みが和らいできた、食事も少し楽になった。そんな治りかけの兆候が見えてくると、ついつい油断してしまいがちです。しかし、この「治りかけ」という時期こそ、実は注意が必要なタイミングなのです。なぜなら、完全に治癒したわけではなく、口腔内の粘膜はまだデリケートで傷つきやすい状態にあるからです。ここで無理をすると、症状がぶり返したり、治癒が遅れたりする可能性があります。まず考えられるのは、食事による刺激です。痛みが軽減したからといって、すぐに辛いものや熱いもの、硬いものを食べ始めると、治りかけていた粘膜に再びダメージを与えてしまいます。炎症が再燃し、またあの辛い痛みに悩まされることになりかねません。また、アルコールや炭酸飲料なども刺激となるため、完治するまでは控えるのが賢明です。次に、不適切な口腔ケアも問題です。患部をゴシゴシと強く磨いたり、刺激の強い歯磨き粉や洗口液を使用したりすると、粘膜を傷つけてしまう恐れがあります。歯磨きは優しく丁寧に行い、患部には直接ブラシが当たらないように気をつけましょう。うがい薬も、できれば刺激の少ないものを選ぶと良いでしょう。さらに、生活習慣の乱れも治癒を妨げる大きな要因です。睡眠不足や過労、ストレスは体の免疫力を低下させます。免疫力が落ちると、細菌に対する抵抗力も弱まり、口内炎が悪化しやすくなったり、治りにくくなったりします。治りかけの時期こそ、十分な睡眠と休息を確保し、バランスの取れた食事を心がけ、ストレスを溜め込まないようにすることが大切です。また、治りかけに見えても、実は別の問題が隠れている可能性もゼロではありません。例えば、口内炎がなかなか治らない、頻繁に繰り返す、あるいは大きさが異常であるといった場合には、単なるアフタ性口内炎ではなく、他の疾患のサインであることも考えられます。