上唇が突然腫れ上がると、食事や会話がしづらくなるだけでなく、見た目も気になり、不安になるものです。「これは何が原因なんだろう?アレルギーかな?それとも何か悪い病気だったらどうしよう…」と、いろいろな考えが頭をよぎるかもしれません。上唇の腫れの原因は多岐にわたるため、正確に特定することが適切な対処への第一歩となります。まず、最も頻繁に見られる原因の一つが「アレルギー反応」です。特定の食べ物(果物、野菜、ナッツ、甲殻類、卵、牛乳、小麦など)、化粧品(口紅、リップクリーム、歯磨き粉など)、薬剤(内服薬、外用薬)、金属(歯科治療で使われるもの、アクセサリーなど)、あるいはラテックス(ゴム製品)などに触れたり、摂取したりすることで、アレルギー反応として唇が腫れることがあります。特に、口唇や口の周りに症状が限局する「口腔アレルギー症候群」は、果物や野菜に含まれるタンパク質が原因で起こることが多く、花粉症と関連していることもあります。アレルギーによる腫れは、原因物質に接触後、数分から数時間以内に現れることが多く、痒みや赤み、ピリピリ感を伴うこともあります。次に、「物理的な刺激や外傷」も一般的な原因です。誤って唇を噛んでしまったり、転倒してぶつけたり、熱いもので火傷したりすると、炎症や内出血によって腫れます。また、乾燥や紫外線、あるいは唇を舐める癖なども、唇の荒れを引き起こし、二次的な感染や炎症で腫れることがあります。感染症も重要な原因です。「口唇ヘルペス」は、単純ヘルペスウイルスの感染によって起こり、唇の周りに小さな水ぶくれができ、その周囲が腫れぼったくなります。初期にはピリピリとした違和感があります。細菌感染としては、唇の傷口から細菌が入り込んで化膿し、蜂窩織炎(ほうかしきえん)という皮膚の深い部分の炎症を起こすと、赤みや熱感、痛みを伴って大きく腫れることがあります。歯や歯茎のトラブルが原因で上唇が腫れることもあります。上の前歯の根の先に膿が溜まる「根尖性歯周炎」や、歯周病が進行した場合、炎症が周囲の組織に波及し、上唇が腫れることがあります。この場合、歯の痛みや歯茎の腫れを伴うことが多いです。その他、稀な原因として、「血管性浮腫(クインケ浮腫)」という、原因不明の突発的な腫れや、薬剤の副作用、あるいは虫刺され(特に蚊やブヨ)によるアレルギー反応なども考えられます。