歯科医院での治療が完了し、これで一安心と思っていた矢先、治療したはずの歯が再びズキズキと痛み出し、夜も眠れないほどの苦痛に襲われることがあります。このような経験は、患者さんにとって非常なストレスとなり、不安を増大させるものです。なぜ一度治療した歯が、このように激しく痛むのでしょうか。その背景には、いくつかの可能性が潜んでいます。一つは、治療した歯の神経がまだ炎症を起こしている、あるいは治療の刺激によって一時的に過敏になっている状態です。特に、虫歯が深かった場合や、神経に近い部分まで削る治療を行った際には、治療後しばらくの間、ズキズキとした拍動性の痛みや、冷たいものや温かいものがしみるような症状が出ることがあります。通常、これらの症状は時間とともに軽快していきますが、痛みが日に日に増していく、あるいは全く改善の兆しが見られない場合は、別の原因を考える必要があります。また、根管治療(歯の神経の治療)を行った歯が痛むケースも少なくありません。根管治療は非常に複雑で精密な治療であり、治療後も歯の根の先に微細な炎症が残っていたり、完全に除去しきれなかった細菌が再び活動を始めたりすることで、痛みや腫れを引き起こすことがあります。これを根尖性歯周炎と呼び、特に体調が優れない時や免疫力が低下している時に症状が現れやすい傾向があります。さらに、治療で詰めたものや被せたものの高さが合っていない場合も、噛み合わせの際に特定の歯に過度な力がかかり、歯根膜炎という歯の周りの組織の炎症を引き起こして痛むことがあります。この場合は、噛み合わせの調整を行うことで症状が改善することが期待できます。夜間に痛みが強くなるのは、体がリラックスし血行が良くなることや、日中の活動による交感神経の興奮が収まり、副交感神経が優位になることで痛みを感じやすくなるためとも言われています。いずれにせよ、治療した歯の痛みが強く、睡眠を妨げるほどであるならば、自己判断で放置せず、速やかに治療を受けた歯科医師に相談することが最も重要です。原因を特定し、適切な追加治療や処置を受けることで、つらい痛みから解放される道が開けます。