歯ぐきにできる病気は歯肉癌だけではありません。歯肉癌の初期症状は、他の様々な口腔内の病気と非常によく似ているため、自分で正確に見分けることは困難です。そのため、「もしかして歯肉癌かも」と不安に思っても、それは全く別の病気である可能性も十分にあります。歯肉癌と間違えやすい主な病気には、まず「歯周病」があります。歯周病が進行すると、歯ぐきが腫れたり、出血しやすくなったり、ただれたりすることがあります。これは歯肉癌の初期症状と似ていますが、歯周病はプラークや歯石が原因で起こる炎症性の病気です。次に「口内炎」です。頬や舌だけでなく、歯ぐきにもできます。一般的に白い潰瘍の周囲が赤くなり、強い痛みを伴いますが、大きさや形は様々です。しかし、治癒しない口内炎は注意が必要です。「良性腫瘍」も歯肉癌と間違えやすい病気です。例えば、線維腫や乳頭腫などがあり、歯ぐきにできものやしこりとして現れます。これらは悪性ではないため転移の心配はありませんが、見た目だけでは歯肉癌と区別がつかないことがあります。その他にも、慢性の刺激(合わない入れ歯や歯の尖った部分など)による潰瘍や炎症、ウイルス感染による病変など、様々な原因で歯ぐきに異常が現れることがあります。これらの病気は、それぞれ治療法が異なります。自己判断で「これは口内炎だろう」「歯周病が悪化しただけだ」と決めつけて放置せず、必ず歯科医院を受診することが重要です。専門家である歯科医師は、これらの病気を鑑別するための知識と経験を持っています。適切な診断を受けることが、不必要な心配をなくし、必要な治療を開始するために不可欠です。