「口を開けると顎がカクカク鳴る」「口が大きく開けられない」「顎が痛い」といった症状で知られる顎関節症ですが、実はこの顎関節症が、片側の喉や歯の痛みを引き起こすことがあるのをご存知でしょうか。顎関節は、下顎骨と側頭骨をつなぐ関節で、食事や会話など、口を動かす際に重要な役割を担っています。この顎関節や、その周囲の筋肉(咀嚼筋)に何らかの異常が生じるのが顎関節症です。顎関節症の原因は一つではなく、噛み合わせの異常、歯ぎしりや食いしばり、ストレス、頬杖などの生活習慣、外傷など、様々な要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。顎関節症の主な症状は、顎の痛み、口の開閉時の異音(クリック音やジャリジャリ音)、開口障害(口が開きにくい、または閉じにくい)ですが、これらの症状に加えて、頭痛、肩こり、耳鳴り、めまい、そして片側の歯の痛みや喉の違和感・痛みなどが現れることがあります。なぜ顎関節症で歯や喉が痛むのでしょうか。まず、顎関節や咀嚼筋の炎症や緊張が、周囲の神経を刺激し、関連痛として歯や喉に痛みを引き起こすと考えられます。特に、咀嚼筋の一つである内側翼突筋(ないそくよくとつきん)などに緊張や炎症が起こると、喉の奥や耳の下あたりに痛みを感じることがあり、これが喉の痛みや飲み込みにくさとして認識されることがあります。また、顎関節の異常によって噛み合わせが不安定になると、特定の歯に過度な負担がかかり、歯の痛みや違和感が生じることもあります。さらに、顎の不調は首や肩の筋肉にも影響を与え、それが間接的に喉の圧迫感や痛みに繋がる可能性も指摘されています。顎関節症による片側の歯や喉の痛みは、原因が顎にあるため、歯の治療や喉の治療をしてもなかなか改善しないという特徴があります。もし、片側の歯や喉の痛みに加え、顎の症状(痛み、音、開きにくさなど)も自覚している場合は、顎関節症の可能性を疑い、歯科、口腔外科、あるいは顎関節症を専門とする医療機関を受診することをお勧めします。
顎関節症と片側の喉や歯の痛み