食いしばりや歯ぎしりの治療法として、ボトックス注射とマウスピース(ナイトガード)はそれぞれ異なるアプローチで症状の改善を目指します。ボトックスは咬筋(こうきん)の力を直接的に弱めるのに対し、マウスピースは歯や顎関節への物理的な負担を軽減するものです。では、これらの治療法を併用することは可能なのでしょうか。また、併用することでどのような効果が期待できるのでしょうか。結論から言うと、食いしばりボトックスとマウスピースの併用は可能であり、場合によってはより効果的な治療結果をもたらすことがあります。それぞれの治療法が持つメリットを組み合わせることで、単独の治療では得られにくい相乗効果が期待できるのです。まず、ボトックス注射の主な効果は、咬筋の過剰な収縮力を弱め、無意識の食いしばりや歯ぎしりの力を軽減することです。これにより、歯にかかる異常な力そのものを減らすことができます。しかし、ボトックスの効果は永久的ではなく、数ヶ月で薄れてきます。また、完全に食いしばりをゼロにするわけではありません。一方、マウスピースは、睡眠中に装着することで、上下の歯が直接強く接触するのを防ぎ、歯の摩耗や破折、詰め物の脱離などを物理的に保護する役割があります。また、顎関節にかかる負担を軽減し、顎関節症の症状緩和にも役立ちます。しかし、マウスピースは食いしばりの力そのものを弱めるわけではなく、あくまで力を受け止めて分散させるものです。また、日中の無意識な食いしばりには対応できません。