歯科医院で治療を済ませた歯が、後になってからズキズキと痛み出し、夜も眠れないほどの苦痛を伴うことがあります。これは患者さんにとって、「なぜ治療したのに?」という疑問と不安を抱かせる深刻な問題です。このような症状が現れる背景には、いくつかの歯科的な原因が潜んでいると考えられます。一つ目の可能性として、治療した歯の神経が炎症を起こしている状態、いわゆる歯髄炎が挙げられます。虫歯が深かった場合、治療によって神経が刺激を受け、一時的に過敏になったり、炎症が進行したりすることがあります。初期の可逆性歯髄炎であれば症状が落ち着くこともありますが、炎症が進行して不可逆性歯髄炎になると、ズキズキとした持続的な痛みや、夜間に悪化する痛みが特徴的に現れます。この場合、神経を取る治療(抜髄)が必要になることがあります。二つ目に、根管治療(歯の神経の治療)後の問題です。根管治療は非常に精密な治療であり、治療が完了しても歯の根の先に微細な感染が残っていたり、治療後に新たに細菌が侵入したりすることで、根尖性歯周炎という状態を引き起こすことがあります。これは歯の根の先端部分に膿が溜まる病気で、噛んだ時の痛みや、何もしなくてもズキズキする痛み、歯茎の腫れなどを伴います。特に体調が悪い時や免疫力が低下している時に症状が出やすい傾向があります。三つ目に、治療で施された詰め物や被せ物の高さが不適切な場合です。噛み合わせの際に特定の歯だけが強く当たるようになると、その歯や周囲の歯周組織に過度な負担がかかり、歯根膜炎という炎症を引き起こして痛みを生じさせることがあります。これは咬合性外傷とも呼ばれ、噛み合わせの調整で改善することが多いです。その他にも、歯の根が割れている歯根破折や、治療した歯の隣の歯に問題があるなど、様々な要因が考えられます。夜間に痛みが強くなるのは、体が温まることで血流が促進され、炎症部位の圧が高まるためとされています。いずれにしても、治療した歯の痛みが強く、日常生活や睡眠に支障をきたすようであれば、自己判断せずに速やかに歯科医師に相談し、原因を特定してもらうことが重要です。適切な診断と再治療によって、苦痛から解放される道が開けます。