歯医者さんで「小さい虫歯があります」と言われたのに、「これはまだ治療しなくても大丈夫です。様子を見ましょう」と告げられ、疑問に思ったことはありませんか。「虫歯なのに放っておいていいの?」と不安になるかもしれません。しかし、歯科医師が小さい虫歯をすぐに治療しないのには、きちんとした理由があります。主に以下の3つの理由が考えられます。第一の理由は、「歯の再石灰化を期待できるから」です。虫歯は、歯の表面のエナメル質が酸によって溶かされることから始まります。しかし、ごく初期の段階で、まだ穴が開いていないような小さな虫歯(専門用語でCO:初期う蝕と言います)であれば、唾液の力やフッ素の助けによって、溶け出したミネラル成分が再び歯に取り込まれ、修復される「再石灰化」という現象が起こり得ます。この再石灰化が期待できる場合、歯科医師は歯を削るという不可逆的な処置を避け、まずは自然治癒の可能性に賭けるのです。一度削ってしまった歯は元には戻りません。できる限り自分の歯を温存するという考え方が、現代の歯科医療の主流です。第二の理由は、「虫歯の進行が止まっている、あるいは非常に遅い可能性があるから」です。すべての虫歯が同じスピードで進行するわけではありません。中には、進行が停止している「静止性う蝕」と呼ばれる状態の虫歯もあります。これは、その人の唾液の性質、口腔内の清掃状態、食生活など、様々な要因が絡み合って起こります。もし、レントゲン写真や視診で、虫歯が長期間変化していない、あるいはごくわずかな変化しか見られないと判断されれば、急いで治療する必要はないと判断されることがあります。定期的な観察を続けることで、本当に治療が必要なタイミングを見極めるのです。第三の理由は、「治療によるデメリットを考慮しているから」です。どんなに小さな虫歯でも、治療のために歯を削るという行為は、歯にとってある程度のダメージとなります。また、詰め物をしたとしても、その詰め物と歯の境目から再び虫歯になるリスク(二次う蝕)や、詰め物が劣化して取れたり割れたりするリスクもゼロではありません。つまり、治療をすることで、かえって将来的な歯の寿命を縮めてしまう可能性も考慮しなくてはならないのです。そのため、治療によるメリットがデメリットを上回ると判断されない限り、積極的な治療は控えるという選択がなされることがあります。
なぜ?小さい虫歯を歯科医がすぐ治療しない3つの理由